この計算ツールでできること
このツールは、放射性物質で汚染された空気を呼吸することによって人体が受ける預託実効線量(内部被曝線量)を計算します。対象とするのは、報道などでもよく取り上げられる3種類の放射性核種、ヨウ素131(I-131)、セシウム134(Cs-134)、セシウム137(Cs-137)です。線量評価の考え方は世界共通であり、ここで初期値として表示している線量係数は、世界各国で用いられているICRP系の預託実効線量係数に基づき、日本の放射線医学総合研究所(放医研)が整理した値を採用しています。
主な単位について
1ベクレル(Bq)は1秒間に1回の原子核崩壊が起こることを表し、放射能の強さ(ここでは空気中の放射能濃度)を示します。1シーベルト(Sv)は人体への生物学的影響を表す実効線量の単位です。線量係数(摂取量あたりの預託実効線量)は、放射性核種の種類だけでなく対象者の年齢区分によっても変わります。これは、臓器の大きさ・代謝・呼吸量が年齢ごとに異なるためです。
使い方
まず年齢区分を選ぶと、その区分に応じた呼吸量と線量係数が初期値として読み込まれます(いずれも自由に編集できます)。次に、各核種について空気中の放射能濃度をBq/m³で入力し、被曝した日数を入力してください。計算結果として、核種ごとの線量と合計線量が、マイクロシーベルト(µSv)・ミリシーベルト(mSv)・シーベルト(Sv)で表示されます。
計算式の解説
各核種について、吸入した放射能量は「放射能濃度(Bq/m³)×呼吸量(m³/日)×日数」で求まり、これが吸入した総ベクレル数(Bq)になります。これに線量係数(µSv/Bq)を掛けると、線量(µSv)が得られます。合計線量は各核種の線量を足し合わせたものです。すなわち、線量=放射能濃度×線量係数×1日あたりの呼吸量×日数、となります。
$$\begin{gathered} E = B \cdot D \sum_{i} C_i \, e_i \\[1.5em] \text{where}\quad \left\{ \begin{aligned} B &= \text{Breathing Rate (m}^3\text{/day)} \\ D &= \text{Days} \\ C_i \, e_i &= \text{C}_{I131}\,e_{I131} + \text{C}_{Cs134}\,e_{Cs134} + \text{C}_{Cs137}\,e_{Cs137} \end{aligned} \right. \end{gathered}$$
計算例
成人、呼吸量22.2 m³/日、1日間とします。濃度はI-131が100、Cs-134が50、Cs-137が50 Bq/m³です。吸入量はそれぞれ2220、1110、1110 Bq。線量は、\(2220\times0.0074=16.428\) µSv、\(1110\times0.0066=7.326\) µSv、\(1110\times0.0039=4.329\) µSvとなります。合計=28.083 µSv=0.028083 mSvです。
よくある質問
放射性壊変(減衰)は考慮されていますか? いいえ。預託実効線量は成人で50年間、子どもでは70歳になるまでの期間にわたって積算した値であり、その積算は線量係数にあらかじめ織り込まれています。
なぜ年齢によって結果が変わるのですか? 年齢が低いほど呼吸量や代謝が異なるため、線量係数の値も変わってくるからです。
これは法令に基づく正式な被曝評価ですか? いいえ。本ツールは簡易的なスクリーニング目的の概算です。実際の評価では、より多くの核種、経口摂取(食品・飲料)などの経路、時間とともに変化する摂取量まで考慮されます。