ボーアの原子模型計算ツールとは?
ボーアの原子模型は、1913年にニールス・ボーアが提唱したモデルで、原子を「正に帯電した小さな原子核のまわりを、電子が決まった量子化された円軌道で回っている」ものとして描きます。この計算ツールは、水素型(電子が1個だけ)の原子やイオンについて、電子の軌道半径とエネルギー準位を求めます。水素(Z = 1)はもちろん、He⁺(Z = 2)やLi²⁺(Z = 3)といったイオンにも対応しています。
使い方
2つの整数を入力してください。1つは軌道を表す主量子数 n(1, 2, 3, …)、もう1つは原子核内の陽子数である原子番号 Zです。入力すると、軌道半径をナノメートル(nm)とピコメートル(pm)で、その準位のエネルギーを電子ボルト(eV)で、そして電子の軌道速度を表示します。
計算式の解説
軌道半径は $$r_n = \frac{\text{n}^{2} \cdot a_0}{\text{Z}} \qquad (a_0 = 0.05292\ \text{nm})$$ で求められます。ここで \(a_0 \approx 0.0529\ \text{nm}\) はボーア半径と呼ばれ、水素の基底状態の半径にあたります。軌道半径は \(n\) の2乗に比例して大きくなり、原子核の電荷 \(Z\) が大きくなるほど小さくなります。エネルギー準位は $$E_n = -13.6\,\text{eV} \cdot \frac{\text{Z}^{2}}{\text{n}^{2}}$$ です。電子は原子核に束縛されているため、エネルギーは負の値になります。13.6 eV という数値は、水素の基底状態のイオン化エネルギーに相当します。
計算例
水素(Z = 1)の第2軌道(n = 2)の場合:$$r_2 = \frac{2^{2} \times 0.0529}{1} = 0.2117\ \text{nm}$$ $$E_2 = -13.6 \times \frac{1}{4} = -3.4\ \text{eV}$$ となります。基底状態(−13.6 eV)に比べて、電子はより外側にあり、束縛もより弱くなっていることが分かります。
定数と基準値
ボーア模型は小さな基本定数のセットを使用します。軌道半径はボーア半径 \(a_0\) でスケールし、エネルギー準位はリュードベリ・エネルギーでスケールします。以下の値は現代のCODATA推奨値です。
| 物理量 | 記号 | 値(SI単位) |
|---|---|---|
| ボーア半径 | \(a_0\) | 0.05292 nm = 52.92 pm = 5.292 × 10⁻¹¹ m |
| リュードベリ・エネルギー(基底状態) | \(E_1\) (H) | 13.606 eV = 2.180 × 10⁻¹⁸ J |
| 電子の静止質量 | \(m_e\) | 9.109 × 10⁻³¹ kg |
| 基本電荷 | \(e\) | 1.602 × 10⁻¹⁹ C |
| クーロン定数 | \(k = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\) | 8.988 × 10⁹ N·m²·C⁻² |
| 換算プランク定数 | \(\hbar\) | 1.055 × 10⁻³⁴ J·s |
| 基底状態の軌道速度(水素) | \(v_1\) | 2.188 × 10⁶ m/s |
| 微細構造定数 | \(\alpha = v_1/c\) | 7.297 × 10⁻³ ≈ 1/137(無次元) |
水素の基底状態における軌道速度は \(\alpha c\) に等しいです。ここで \(c\) は光速です。これが \(\alpha\) が微細構造定数とも呼ばれる理由です。光に対する電子の運動のスケールを設定します。
よくある質問
多電子原子にも使えますか? ボーアの原子模型が厳密に成り立つのは、電子が1個だけの系(H、He⁺、Li²⁺ など)に限られます。それ以外の原子では、あくまで近似的な値となります。
なぜエネルギーが負になるのですか? 束縛された電子は、無限遠で静止した自由電子(エネルギーを0と定義)よりもエネルギーが低いため、束縛状態のエネルギーは負の値になります。
ボーア半径とは何ですか? \(a_0 \approx 0.0529\ \text{nm}\)(52.9 pm)で、基底状態の水素において陽子と電子のもっとも存在確率が高い距離を表します。