コンプトン散乱とは?
コンプトン散乱とは、X線やガンマ線の光子が自由電子(または束縛の弱い電子)と衝突したときにエネルギーを失う現象です。1923年にアーサー・コンプトンによって発見され、光が運動量をもち粒子としてふるまうことを裏づける決定的な証拠となりました。衝突後の散乱光子は入射光子よりも波長が長くなり、その差をコンプトンシフト \(\Delta\lambda\) と呼びます。
計算式の解説
波長シフトは散乱角 \(\theta\) のみで決まり、もとの波長には依存しません。
$$\Delta\lambda = \frac{h}{m_e c}\left(1 - \cos\theta\right)$$
ここで \(h\) はプランク定数(\(6.626 \times 10^{-34}\ \text{J}\cdot\text{s}\))、\(m_e\) は電子の静止質量(\(9.109 \times 10^{-31}\ \text{kg}\))、\(c\) は光速(\(2.998 \times 10^{8}\ \text{m/s}\))です。\(h/(m_e c)\) の組み合わせは電子のコンプトン波長と呼ばれ、約 \(2.426 \times 10^{-12}\ \text{m}\)(\(2.426\ \text{pm}\))になります。シフトは \(\theta = 0^\circ\)(前方散乱)でゼロ、\(\theta = 180^\circ\)(後方散乱)で最大となり、このとき \(\Delta\lambda = 2 \times 2.426\ \text{pm}\) です。
計算機の使い方
入射光子の波長をナノメートル単位で、散乱角を度数(0〜180)で入力してください。コンプトンシフト \(\Delta\lambda\) がピコメートルとナノメートルで表示され、さらに散乱後の波長 \(\lambda^{\prime} = \lambda + \Delta\lambda\) も求められます。
計算例
散乱角が \(90^\circ\) の場合、\(\cos 90^\circ = 0\) なので、 $$\Delta\lambda = \frac{h}{m_e c} \times (1 - 0) = 2.426\ \text{pm}$$ となります。入射X線の波長が \(0.005\ \text{nm}\)(\(5\ \text{pm}\))であれば、散乱後の波長は \(5 + 2.426 = 7.426\ \text{pm} \approx 0.007426\ \text{nm}\) になります。
よくある質問
なぜシフトは入射波長に依存しないのですか? 計算式には定数と角度しか含まれないため、同じ角度であれば、もとの波長に関係なく常に同じ絶対シフト \(\Delta\lambda\) が生じます。
シフトの最大値はどれくらいですか? \(\theta = 180^\circ\) のとき係数 \((1 - \cos\theta) = 2\) となり、最大のシフト \(4.852\ \text{pm}\) が得られます。
可視光にも当てはまりますか? シフト(数 pm)は可視光の波長(数百 nm)に比べてごくわずかなので、この効果はX線やガンマ線でしか測定できません。