この計算ツールについて
このツールは、水素様原子(電荷Zの原子核に1個の電子が束縛された系。水素HやヘリウムイオンHe⁺など)の量子力学的波動関数のうち、動径方向の成分を計算します。動径波動関数Rnl(r)と動径分布関数 \(D(r) = r^{2}|R_{nl}(r)|^{2}\) を、指定した半径の範囲でサンプリングし、簡単な棒グラフとして表示します。国や地域に依存しない普遍的な物理ツールであり、すべての距離はボーア半径(a = 1)を単位として表します。
使い方
まず原子核を選びます(Z = 1なら水素H、Z = 2ならHe⁺)。次に主量子数n(1, 2, 3, …)と方位量子数l(0からn-1まで)を入力します。さらに、開始半径・刻み幅・サンプリングする点数を設定してください。計算するとr、Rnl(r)、D(r)の表が作成され、D(r)が最大となる半径が強調表示されるほか、確認用として規格化積分のおおよその値も示されます。
計算式の解説
\(x = 2Zr/n\) と置くと、動径関数は $$R_{n\ell}(r) = -P\, e^{-Zr/n}\, x^{\ell}\, L_{n-\ell-1}^{2\ell+1}(x)$$ と表せます。ここで前係数は $$P = \sqrt{\left(\tfrac{2Z}{n}\right)^{3}\dfrac{(n-\ell-1)!}{2n\,(n+\ell)!}}$$ で、Lはラゲール陪多項式です。先頭のマイナス符号は位相の取り方による約束事にすぎず、\(|R_{n\ell}|^{2}\) には影響しません。これに \(r^{2}\) を掛けたものがD(r)で、半径rとr+drの間の薄い球殻内に電子を見いだす確率を表します。
計算例
水素の1s軌道(Z = 1, n = 1, l = 0)で、r = 1ボーア半径の場合:\(x = 2\)、\(P = \sqrt{8 \times 0.5} = 2\)、\(L_{0}^{1}(2) = 1\) となるので、 $$R = -2e^{-1} = -0.73576$$ $$D = 1^{2} \times 0.73576^{2} = 0.54134$$ です。これは実は1s軌道におけるD(r)の最大値であり、電子が存在する確率が最も高い半径がちょうど1ボーア半径であることを示しています。
よくある質問
D(r)のピークがなぜr = 0にないのですか? 1s軌道では \(|R_{n\ell}|^{2}\) 自体は原子核の近くで最大になりますが、球殻の体積に相当する因子 \(r^{2}\) が原点でゼロになるため、\(D(0) = 0\) となり、確率は有限の半径でピークを迎えます。
単位は何ですか? すべてボーア半径(a = 1)が単位です。したがってr、刻み幅、ピーク半径はいずれもボーア半径(約0.529オングストローム)の無次元の倍数として表されます。
規格化の確認値がちょうど1にならないのはなぜですか? この積分は、指定した点を用いた単純な長方形和で近似しているためです。範囲を広げ、刻み幅を小さくすると1に近づきます。