大森公式とは
地震が発生すると、震源から2種類の主要な実体波が四方に伝わります。速度の速いP波(初期微動を起こす波)が先に到達し、遅れて強い揺れ(主要動)をもたらすS波が届きます。このP波とS波の到達時刻の差が「初期微動継続時間」で、記号 \(t\) で表します。大森公式は、この時間差から観測点と震源との距離 \(d\) を推定するもので、$$d = k \times t$$ という非常にシンプルな式で表されます。これは世界中の地学の授業で学ぶ地震学の普遍的な法則で、特定の国だけに当てはまるものではありません。
計算機の使い方
まず地震のタイプを選びます。これにより大森定数 \(k\) のおおよその値が自動で設定されます(浅くて近い地震では約 8 km/s、やや遠い地震では 6〜7 km/s 程度)。その後、\(k\) の値は妥当な範囲(おおむね 4〜10 km/s)で自由に変更できます。次に、P波とS波の到達時刻の差である初期微動継続時間 \(t\) を秒単位で入力してください。これで震源距離 \(d\) がキロメートル単位で求められます。
公式のしくみ
P波もS波も、震源から観測点まで同じ距離 \(d\) を進みます。P波の到達には \(d/V_p\) 秒、S波には \(d/V_s\) 秒かかるため、その時間差は $$t = \frac{d}{V_s} - \frac{d}{V_p} = \frac{d(V_p - V_s)}{V_p V_s}$$ となります。これを \(d\) について解くと $$d = \frac{V_p V_s}{V_p - V_s} \times t$$ です。先頭の分数こそが大森定数 \(k = \frac{V_p V_s}{V_p - V_s}\) にあたり、式は $$d = k \times t$$ という形に整理されます。\(k\) の単位は km/s、\(t\) の単位は秒なので、\(d\) はそのままキロメートルで得られ、単位換算は不要です。
計算例
\(k = 8\) km/s、\(t = 3\) s とすると、$$d = 8 \times 3 = 24 \text{ km}$$ となります。速度を明示して検算してみましょう。\(V_p = 8\) km/s、\(V_s = 4\) km/s のとき、$$k = \frac{8 \times 4}{8 - 4} = \frac{32}{4} = 8 \text{ km/s}$$。P波は \(24/8 = 3\) 秒後、S波は \(24/4 = 6\) 秒後に到達し、その差は 3 秒で \(t\) と一致します。したがって震源はおよそ 24 km 先にあると分かります。
よくある質問
なぜ \(k\) は値が変わるのですか? 波の速度は通過する岩石の性質によって変わるため、平均的な \(k\) は深さや距離に応じて変化します。これが、おおむね 4〜10 km/s という幅がある理由です。
\(t = 0\) のときは? P波とS波が同時に到達することを意味し、\(d = 0\) km、つまり実質的に到達差が測定できない状態になります。
この値は正確ですか? いいえ。均質な媒質の中を直線的に進み、平均速度が一定であると仮定しているため、あくまで教科書的な近似値です。正確に震源を特定するものではありません。