この計算機でできること
単振り子の周期としてよく知られる式 \(T_0 = 2\pi\sqrt{l/g}\) は、振れ幅がごく小さい場合にのみ成り立つ近似式です。振幅(最大振れ角)が大きくなると、実際の振り子は近似値よりもゆっくり振れます。本ツールは第一種完全楕円積分を用いて正確な周期を計算し、微小振動近似による周期、そしてその比を、さまざまな振幅角について一覧表にまとめます。
使い方
糸の長さ \(l\)(メートル)と重力加速度 \(g\)(m/s²)を入力します(初期値 9.80665 は標準重力です)。振幅角の刻みを 5° または 10° から選びます。計算結果には、まず振幅に依存しない微小振動近似の周期 \(T_0\) が主要な値として表示され、続いて刻み幅から 180° 直前までの各振幅 \(\alpha\) について、正確な周期 \(T\) と比 \(T/T_0\) の行が並びます。
計算式の解説
正確な周期は $$T = 4\sqrt{\frac{l}{g}}\cdot K(k)$$ で与えられます。ここで \(k = \sin(\alpha/2)\) は楕円係数(母数)、\(K(k) = \int_0^{\pi/2} \frac{d\phi}{\sqrt{1-k^2\sin^2\phi}}\) です。\(K\) の値は、高速かつ正確に収束する算術幾何平均(AGM)で求めます。\(a_0=1\)、\(b_0=\cos(\alpha/2)\) から出発し、\(a_{n+1}=(a_n+b_n)/2\)、\(b_{n+1}=\sqrt{a_n b_n}\) を両者が収束するまで反復し、\(K = \pi/(2a_\infty)\) とします。比は \((2/\pi)K(\sin(\alpha/2))\) に整理でき、振幅ゼロで 1、振幅が 180° に近づくにつれて発散します。
計算例
\(l = 1\) m、\(g = 9.80665\) m/s² の場合:\(\sqrt{l/g} = 0.319330\) s なので、\(T_0 = 2.006419\) s となります。\(\alpha = 30\degree\) のとき、\(k = \sin 15\degree = 0.258819\)、\(K = 1.598142\) で、\(T = 2.041253\) s、比は \(1.017362\) となります。これは微小振動近似より約 1.74% 長く、教科書でおなじみの補正式 \(1 + \alpha^2/16\) とよく一致します。
よくある質問
なぜ振幅が大きいほど周期が長くなるのですか? 復元のトルクは \(\theta\) ではなく \(\sin\theta\) に比例します。振れ幅が大きいと \(\sin\theta < \theta\) となるため、実効的な復元力が弱まり、1 往復にかかる時間が長くなります。
なぜ 180° 手前で表が止まるのですか? ちょうど 180° では振り子は不安定な逆立ちの位置から出発することになり、\(k = 1\) となって \(K\) が無限大に発散するため、周期が定まりません。そのため表は 180° の直前で打ち切っています。
AGM 法は正確ですか? AGM は 10 回未満の反復で機械精度まで二次収束するため、表示される桁数の範囲では計算値は正確です。級数を途中で打ち切る方法よりはるかに高精度です。