y+とは?
無次元壁面距離、いわゆるy+(ワイプラス)は、数値流体力学(CFD)における重要なパラメータです。乱流境界層において、壁面に最も近いメッシュセルの高さを、粘性長さスケールを基準にして表したものです。この値を見れば、壁近傍のメッシュが粘性底層(viscous sublayer)まで解像できているのか、遷移層(buffer layer)に入っているのか、それとも対数則領域で壁関数(wall function)に頼っているのかが判断できます。
このツールの使い方
流体の密度ρ、動粘性係数μ、壁面せん断応力τ_w、そして壁面から第一セルの重心までの距離yを入力してください。すると摩擦速度u_τが計算され、続いてy+が求められます。壁面まで解像する低レイノルズ数モデルでは\(y^+ \approx 1\)を、壁関数を使う場合はおおよそ30〜300を目安にするとよいでしょう。
計算式の解説
まず、壁面せん断応力から摩擦速度を求めます: $$u_\tau = \sqrt{\frac{\tau_w}{\rho}}$$ この速度スケールは壁近傍の乱流の特性を表します。次に、 $$y^+ = \frac{\rho \, u_\tau \, y}{\mu}$$ によって、物理的な距離yを粘性長さ\(\nu / u_\tau\)で無次元化します。ここで\(\nu = \mu/\rho\)は動粘度です。これは \(y^+ = u_\tau \, y / \nu\) と書いても同じ意味になります。
計算例
空気を例にとり、\(\rho = 1.225 \ \text{kg/m}^3\)、\(\mu = 1.81 \times 10^{-5} \ \text{Pa}\cdot\text{s}\)、\(\tau_w = 0.1 \ \text{Pa}\)、\(y = 5 \times 10^{-5} \ \text{m}\) とします。このとき $$u_\tau = \sqrt{\frac{0.1}{1.225}} = 0.28571 \ \text{m/s}$$ となり、 $$y^+ = \frac{1.225 \times 0.28571 \times 5 \times 10^{-5}}{1.81 \times 10^{-5}} \approx 0.967$$ です。\(y^+ \approx 1\)を狙う場合、この第一セルの位置はすでに適切だと言えます。
よくある質問
y+はどのくらいを目標にすればよいですか? 壁面まで解像するモデル(例:k-ω SST低レイノルズ数型)では約1、標準的な壁関数を使う場合は30〜300が目安です。
なぜy+は無次元なのですか? y+は壁面距離を粘性長さスケール\(\nu / u_\tau\)で割った値なので、単位が打ち消し合って無次元になります。
τ_wが分からない場合はどうすればよいですか? 摩擦係数から見積もることができます: $$\tau_w = \tfrac{1}{2} \rho U^2 C_f$$ ここで\(C_f\)は \(0.058 \cdot Re^{-0.2}\) などの相関式から求められます。