乗数効果とは
乗数効果は、ケインズ経済学(マクロ経済学)の根幹をなす考え方です。投資や政府支出といった独立支出の増加が起点となり、それが次々と新たな消費を呼び起こすことで、最終的には当初の投入額の何倍もの規模で国民所得を変化させる仕組みを指します。この計算モデル(所得=支出モデル)は普遍的なもので、特定の国だけに当てはまるものではなく、どの経済にも適用できます。
この計算ツールの使い方
初期投資額/支出の変化額(経済に注入される独立支出。\(\Delta I\) や \(\Delta G\) と表されます)と、限界消費性向(MPC)を入力してください。MPC とは、所得が1単位増えたときに家計がそのうち消費に回す割合のことです。入力すると、乗数の値と、それによって生じる国民所得の総変化額が算出されます。
計算式の解説
乗数は次の式で求められます。
$$k = \frac{1}{1 - \text{MPC}}$$家計は新たに得た所得のうち MPC の割合を再び支出するため、当初の注入額 \(\Delta I\) は \(\Delta I + \text{MPC} \cdot \Delta I + \text{MPC}^2 \cdot \Delta I + \dots\) という連鎖を生み出します。\(0 \le \text{MPC} < 1\) のとき、この等比数列の総和は次の値に収束します。
$$\Delta Y = \Delta I \times \frac{1}{1 - \text{MPC}}$$これは \(k = 1 / \text{MPS}\) とも表せます。ここで \(\text{MPS} = 1 - \text{MPC}\) は限界貯蓄性向です。
計算例
政府が 100 単位の支出を行い、MPC が 0.8 だったとします。このとき乗数は次のようになります。
$$k = \frac{1}{1 - 0.8} = \frac{1}{0.2} = 5$$国民所得の総変化額は次のとおりです。
$$100 \times 5 = 500 \text{ 単位}$$つまり、100 単位の支出が最終的に国民所得を 500 単位、当初の 5 倍も押し上げることになります。
よくある質問
MPC が 1 のときはどうなりますか? 分母(\(1 - \text{MPC}\))が 0 になるため、乗数は数学的に定義できず、無限大に発散します。MPC は必ず \(0 \le \text{MPC} < 1\) の範囲でなければなりません。
支出の変化額をマイナスにできますか? できます。マイナスの値は支出の削減を表し、それに比例して国民所得もマイナスに変化します。
なぜ MPC が高いほど乗数も大きくなるのですか? 新たに得た所得のうち、貯蓄されずに再び消費へ回る割合が大きいほど、誘発される支出の連鎖が長く続きます。その結果、所得に与える累積的な効果も大きくなるのです。