対数正規分布とは
正の確率変数 X の自然対数 ln(X) が正規分布に従うとき、X は対数正規分布に従うといいます。言い換えると、平均 μ・標準偏差 σ の正規分布に従う Y を用いて X = e^Y と表せる分布です。対数は正の値に対してのみ定義されるため、対数正規分布は正の実数全体に広がります。これにより、株価・所得・粒子径・生体計測値・故障までの時間(寿命)など、決して負の値をとらない量をモデル化するのに自然と適しています。
この計算ツールの使い方
まず分布を評価したい x の値(必ず 0 より大きい値)を入力し、続いて μ と σ を入力します。初心者がつまずきやすい重要なポイントは、ここでの μ と σ は X 自身ではなく ln(X) の平均と標準偏差である、という点です。計算結果として、確率密度 \(f(x)\)、下側累積確率 \(P(x) = P(X \le x)\)、上側累積確率 \(Q(x) = P(X > x) = 1 - P(x)\) の3つの値が得られます。
計算式の解説
標準化した値(z 値)を \(z = (\ln x - \mu) / \sigma\) と定義します。確率密度は $$f(x) = \frac{1}{x\,\sigma\sqrt{2\pi}}\,\exp\!\left(-\frac{z^2}{2}\right)$$ で与えられます。下側累積確率は \(P(x) = \Phi(z)\) で、ここで Φ は標準正規分布の累積分布関数であり、 $$\Phi(z) = 0.5\cdot\left(1 + \operatorname{erf}\!\left(\frac{z}{\sqrt{2}}\right)\right)$$ です。erf(誤差関数)は標準的な数学ライブラリに組み込まれていないため、本ツールでは Abramowitz & Stegun の式 7.1.26 による多項式近似を用いています。これは約 \(1.5 \times 10^{-7}\) の精度を持ちます。
計算例
x = 2、μ = 0、σ = 1 の場合を考えます。このとき \(\ln(2) = 0.693147\) なので \(z = 0.693147\) となります。確率密度は、exp 項 0.786429 を 5.013256 で割った値となり、\(f(2) \approx 0.156874\) が得られます。下側累積確率は \(\Phi(0.693147) \approx 0.755891\) なので、上側累積確率は $$Q(2) = 1 - 0.755891 \approx 0.244109$$ となります。
よくある質問(FAQ)
なぜ x は正の値でなければならないのですか? 対数正規分布は ln(x) が定義される \(x > 0\) の範囲でのみ定義されるためです。\(x \le 0\) では確率密度は 0、\(P(x) = 0\)、\(Q(x) = 1\) となります。
X 自身の平均を求めるには? X の平均は \(\exp(\mu + \sigma^2/2)\)、中央値は \(\exp(\mu)\)、最頻値は \(\exp(\mu - \sigma^2)\) で求められます。これらは ln(X) を表す μ や σ とは異なる値になる点に注意してください。
σ が 0 のときはどうなりますか? 標準偏差が 0 だと分布が一点に集中(退化)し、計算中にゼロ除算が発生してしまうため、入力としては受け付けられません。代わりに十分小さい正の σ を使用してください。